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身近な生活にある薬用植物 春の香りは沈丁花
 春の香りといえば梅や桜、水仙、フリージアなどの花を連想することが多いですが、遠くまで漂う芳香力の強さでは、おそらく沈丁花が一番でしょう。2月末〜3月頃、外側は赤紫色、内側は白色の小花が1カ所に密集して咲きます。沈丁花の開花は、その姿を見るより先に匂いで知れるため、秋の金木犀(キンモクセイ)と同様に春の到来を告げる香りとして人々の記憶にも刻まれてきました。秋の憂いや哀愁を感じさせる金木犀に対して、春宵に漂う沈丁花の香りは心躍るような瑞兆を感じさせる香りです。

 中国南部が原産とされる常緑低木ですが、日本への渡来時期ははっきりしていません。文献では、一条兼良の著書『尺素往来(1489年)』に「沈丁華」とあるのが最も古く、すでに室町時代には栽培されていたようです。雌雄異株ですが、日本の木はほとんどが雄株のため実を結びません。挿し木によって容易に根づくため、またたく間に市中で広まりました。沈丁花は、今もなお人気が高く、庭木や公園の生垣として栽培されています。漢方薬としては瑞香花といい、花の部分を歯痛、咽喉痛、乳がん初期、神経痛などの薬にしました。民間療法としては歯痛や口内炎の際に使ったようです。

 沈丁花(ジンチョウゲ)という植物名は、日本でついた名称で、香木の沈香(ジンコウ)とスパイスの丁字(チョウジ)に似た香りがするところからきているそうです。
 漢名では瑞香、睡香、あるいは遠くまで香るという意味から七里香や千里香とも呼ばれています。さらに学名でも「芳香のある」という意味からダフネ・オドラと命名されました。香りが強すぎるので、茶事や生け花の世界では嫌忌されて、使用が差し控えられるほどでした。

 沈丁花の香りに古くから関心は集っていましたが、香料としての実用的な研究は遅れていました。近年になって、花の芳香は120以上の香気成分から形成され、リナロール、シトロネロール、ネロール、ゲラニオール、ファルネソール、フェニルエチルアルコール、ネロリドール、ベンジルアセテート、シトロネリルアセテート、アセトフェノン、β―イオノン、ローズオキサイド、インドールなどを含むことが明らかになっています。
 しかしながら、沈丁花の香りとされる芳香剤や消臭剤は、めったに市販されていません。キンモクセイやジャスミンのように、多くの人々から好まれそうな香りにも関わらず、大量生産できないというのは製造面での困難があるのかもしれませんね。部屋の芳香剤や入浴剤の香りとして発売されたら、ぜひ使ってみたいものです。

記事:内藤記念くすり博物館
         野尻 佳与子 (2012年1月)
ジンチョウゲ
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