薬草園に舞うきれいな蝶･･･思わずみとれてしまいますが、実はちょっと困ったこともあるんです。 　蝶は植物に産卵し、その幼虫は葉を食べて育ちます。つまり、植物にとってみれば、せっかく伸ばした芽や葉を食べられてしまう、ということ。 　先ごろ、薬草園のウマノスズクサの一本が、ホソオチョウの幼虫の餌食となっていました。ウイキョウの葉っぱにいたっては、茎の辺りに陣取ったキアゲハの幼虫が一心不乱に食べ続け、とうとう葉っぱが落ちてしまいました。このキアゲハの“幼虫くん”たちは、虫かごに移して試しにウイキョウの茎を与えてみたところ、さなぎになるまでに一匹あたり、7〜8cmの茎を5〜6本必要としました。（ちなみに7匹の幼虫のうち、3匹がさなぎになり、羽化しました。） 　 薬草園では、皆さんに薬草を見てもらうために、あるときは虫を駆除せざるをえませんが、自然界ではむしろ、開発によって植物が減り、カンアオイを食草とするギフチョウが見られなくなるなどの問題が生じています。 　私たちが直接手を貸している訳ではありませんが、開発など生活を豊かにしていくときに、常に自然界とのバランスを考えていくことは、とても大切なことだと思います。 ●参考文献 「蝶」 山渓フィールドブックス5　山と渓谷社 2006 「春の花」「夏の花」「秋の花」 山渓ポケット図鑑 山と渓谷社 1996,1994,1996 記事：内藤記念くすり博物館          稲垣  裕美 （2006年8月） ウマノスズクサに産み付けられたホソオチョウの卵（点線内）   シロネにとまるキアゲハ 【ウマノスズクサ科】 カンアオイの仲間･･･ギフチョウ ウスバサイシンの仲間･･･ヒメギフチョウ ウマノスズクサ･･･ジャコウアゲハ、ホソオチョウ 【ケシ科】 コマクサ･･･ウスバキチョウ ムラサキケマン・エンゴサクの仲間･･･ウスバシロチョウ 【ミカン科】･･･アゲハの仲間 サンショウの仲間･･･クロアゲハ、カラスアゲハ コクサギ・カラタチ･･･オナガアゲハ キハダ･･･ミヤマカラスアゲハ 【セリ科】 パセリ・ニンジン・ミツバ･･･キアゲハ 【クスノキ科】 クスノキ･･･アオスジアゲハ オガタマノキ･･･ミカドアゲハ 【モクレン科】 タイサンボク･･･ミカドアゲハ 【トチノキ科】 トチノキ･･･スギタニルリシジミ 【マメ科】･･･モンキチョウ、シジミチョウの仲間 メドハギ、ネムノキ･･･キチョウ カワラケツメイ･･･ツマグロキチョウ コマツナギ･･･ミヤマシジミ フジ･･･トラフジシミ 【メギ科】 メギ、ヒロハヘビノボラズ･･･ミヤマシロチョウ 【アブラナ科】･･･スジグロシロチョウ、ツマキチョウ キャベツ、ダイコン･･･モンシロチョウ 【ブナ科】･･･ムラサキシジミ他シジミチョウの仲間 マテバシイ･･･ムラサキツバメ イボタノキ･･･ウラゴマシジミ アオダモ･･･ウラキンシジミ 【マンサク科】 マンサク･･･ウラクロシジミ 【クルミ科】 オニグルミ･･･オナガシジミ 【カバノキ科】 ハンノキ･･･ミドリシジミ 【タデ科】 スイバ、ギシギシ･･･ベニシジミ 【カタバミ科】 カタバミ･･･ヤマトジシミ 【ニレ科】 エノキ･･･テングチョウ、オオムラサキ、ゴマダラチョウ 【ガガイモ科】 イケマ･･･アサギマダラ 【ゴマノハグサ科】 クガイソウ･･･コヒョウモンモドキ 【オオバコ科】 オオバコ･･･コヒョウモンモドキ 【スミレ科】･･･オオウラギンスジヒョウモン、ツマグロヒョウモンほか大型ヒョウモン類 【スイカズラ科】 スイカズラ･･･アサマイチモンジ、イチモンジチョウ 【バラ科】 シモツケ･･･フタスジチョウ、ホシミスジ サルトリイバラ･･･ルリタテハ ワレモコウ･･･ヒョウモンチョウ ウメ・アンズ・モモ･･･オオミスジ 【ユキノシタ科】 ウツギ･･･トラフシジミ ノリウツギ･･･サカハチチョウ 【ユリ科】 サルトリイバラ･･･ルリタテハ 【クワ科】 カナムグラ･･･キタテハ 【キク科】 ハハコグサ、ヨモギ･･･ヒメアカタテハ 【ヤマノイモ科】 ヤマノイモ･･･ダイミョウセセリ 【イネ科】･･･ジャノメチョウ・セセリチョウの仲間 ススキ･･･ギンイチモンジセセリ [注]このリストでは、主に本州に生息する蝶の食草・食樹のうち、薬草・薬木を中心にとりあげました。そのため、掲載された植物が、その蝶の主たる食草ではない場合もありますので、ご了承ください。