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くすり博物館のちょこっと歳時記
果物の女王 マンゴスチン (2014.02.28 亀谷 芳明)



 『マンゴー』ではありません。『マンゴスチン』です。そのマンゴスチンが5年ぶりにくすり博物館の温室で、1つ開花し結実しました。前回は2009年に実をつけましたが、当時は、国内の観覧温室では初めてのことで、大変話題になりました。
 マンゴスチンは、マレー半島原産の常緑高木で、熱帯アジアを中心に栽培されています。生長が遅く温度や湿度など生育環境が限られることから、日本国内での栽培は難しいとされています。
 ツバキに似た花は、開花すると3〜4日で花弁が落花します。5ヶ月程かけて果実が直径5〜8cm程の大きさになり成熟していきます。雌雄異株(しゆういしゅ)とされますが雄株は発見されておらず、受精することなく繁殖できる単為生殖(たんいせいしょく)で結実します。果皮にはタンニン、苦味質のマンゴスチンなどの成分が含まれ痰の排泄や下痢止め等に効果があるようです。薬用以外にも果皮の渋は染料に用いられ、アルカリ性で黄色、酸性で黒褐色に染め上がります。マレーやジャワの更紗に使われます。
 果実は高い糖度とさわやかな酸味を併せ持つことから『果物の女王』『世界三大美果の一つ』ともいわれています。マレー半島を支配したイギリスの女王ビクトリア(1837〜1901)は「我が領土に天下第一の美果マンゴスチンがありながら、これを食べたい時に味わえないのは大変残念である」と嘆いたと伝えられています。当時は現在のような冷蔵技術がないため、日持ちの悪い果実をイギリスまで輸送する手段はありませんでした。現在では、スーパー等で冷凍果実なら年中、フレッシュ果実なら4〜9月まで流通しており日本国内でも手に入れることができるようです。
 くすり博物館の温室では、毎週土曜日(第1〜第4)にガイドボランティアによる案内があります。マンゴスチンは今年の5月中旬までは実を見ることができると予測されますので、ぜひ多くの方に見ていただきたいと思います。
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