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くすり博物館のちょこっと歳時記
チョコレートのルーツを探る (2014.01.24 亀谷 芳明)



 くすり博物館薬草園の一角には温室があり、カカオの木が植栽されています。この実を初めてご覧になられた見学者の方は、その様子に驚かれています。日本で見られる植物の多くは、枝先や枝の途中に実をつけるものが多いのですが、このカカオは、幹生果(かんせいか)といって、主幹や枝に直接つけるので、写真のようにまるでラグビーボールが幹にぶら下がっているようです。結実するのは200〜300花に一個で、国内温室での栽培下ではあまり実をつけないようですが、当園では多い時には30個近く実をつけています。
 カカオの実を半分に切ると、ほんのり甘味のある白いパルプに覆われたカカオ豆が、30〜40粒程入っています。これを発酵・乾燥させローストし、種皮を取り除いて粉砕したもの(カカオペースト)に、砂糖・粉乳などを加えてチョコレートが作られます。現在のような固形状のチョコレートが作られ始めたのは、100年程前からで、それ以前は、食べ物というより飲み物でした。カカオは、中南米で紀元前2000年頃から王様や権力者の飲料として飲まれていました。それが、16世紀にスペインにもたらされ、やがてヨーロッパ中に広まりました。1828年にオランダのヴァン・ホーテンにより、カカオペーストから脂肪分を分離する製法が確立されたことにより、現在のチョコレート製法に繋がっていきました。
 カカオには抗菌作用があるため、チョコレートを食べても虫歯の原因にはならないという日本での研究結果があります。その他にカカオ豆に含まれるポリフェノールは、抗酸化作用が強く、生活習慣病などの予防によいとされています。このように、人には有益と考えられているカカオですが犬や猫等にとっては有害です。これは、カカオに含まれるアルカロイドの一種であるテオブロミンという成分を体内で分解できないために中毒を起こすとされるので、動物にチョコレートは与えないようにしましょう。
 普段、何気なく食べているチョコレートにも様々な歴史があり、今日に至っているというロマンを感じてみるのもたまには良いかもしれません。
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