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くすり博物館のちょこっと歳時記
寒さを乗り切る (2013.12.27 稲垣裕美)


冬至の食べ物


柚子湯


神農像
 師走に入って年越しの準備が忙しくなる頃、冬至を迎えます。冬至の日は北半球では1年でもっとも太陽の高度が低くなり昼が短くなる日で、今年は22日にあたります。
 冬至を境に日照時間が延びるため、中国ではこの日に五穀豊穣を祈り、くすりの神様・神農(しんのう)をまつりました。神農はもともと農業の神で、人々に作物の栽培に適した土地や栽培方法を教えたとされますが、後に医薬の神となりました。山野を巡って草をなめ、一日に100回毒にあたりましたが、さまざまな薬草で100回生き返ったといわれています。
 日本でも、大阪の薬問屋街・道修町(どしょうまち)の少彦名(すくなひこな)神社では、11月22〜23日(旧暦の冬至の日)に神農祭がにぎやかに執り行われます。漢方のお医者さんや薬屋さんも神農を“神農さん”と呼んで代々信仰し、冬至の日にお祝いします。京都では冬至の日にぜんざいを食べる風習があり、これを“神農さん”にお供えするところもあります。
 これ以外にも、冬を乗り切るために、冬至の時期だけ栄養価の高い肉食が許されたり、名前に「とう」や「ん」のつくものを食べる風習があります。「とう」は「冬至」の読みに由来するとされ、唐辛子・豆腐・ふきのとうなどを食べるというものです。「ん」がつく食べ物には、ニンジン・レンコン・インゲン・キンカン・ギンナン・ナンキン(=カボチャ)・はんぺん・うんとん(=うどん)などがあり、「運(うん)」が重なるようにという意味のようです。
 また、冬至には柚子湯に入るとよいともいわれます。これは、「冬至」と「湯治」の語呂合わせ説や、「ユズ」だけに「融通」が利くという説があります。柚子湯はユズの実を輪切りにして布袋に入れ、浴槽の中に入れますが、この時、精油成分・チトラールのさわやかな香りで癒され、ひびやあかぎれにもよく、湯冷めを防ぐとされてきました。ユズの出荷時期は秋から春先ですが、出回っている時期にむいた皮を冷凍して保存しておくと便利です。
 冬至はこれから春に向かう日とはいえ、実際の気候は本格的に寒くなる時期ですので、昔からの風習を活用して、栄養をつけ、体を温かくして風邪などひかずに乗り切りたいものです。
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