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くすり博物館のちょこっと歳時記
カキが赤くなると (2013.10.25 伊澤 大)







 秋です。くすり博物館薬草園のシナノガキやフデガキの実が赤くなってきました。「カキが赤くなると医者が青くなる」ということわざがあります。漢方ではカキのへたをおう吐止めや咳止めに用い、民間療法では高血圧にカキの葉をお茶にして飲む、などが知られています。糖分とビタミンCが豊富なカキは夏に弱った体力を回復し、風邪を予防します。効果のほどはさておき、昔のお医者さんにとっては『商売あがったり』な果物だったのかもしれません。
 ビタミンCにはコラーゲンを健やかに保つ働きもあります。コラーゲンの分子は3本の繊維がより合わさった形をしています。より合わさったコラーゲンの繊維がほどけてしまわないようにしているのがビタミンCです。長期間のビタミンC不足で起こる病気に壊血病(かいけつびょう)という病気があります。重症になると歯ぐきから出血することがあります。コラーゲンの繊維を維持できなくなり、歯ぐきや血管の強度を保てなくなってしまうためです。
 ほどけたコラーゲンはゼラチンと呼ばれます。魚を煮たときのプルプルした煮こごり(にこごり)です。骨や皮のコラーゲンが加熱でほどけ、お互いにからまりあった状態になるため、ゼラチンを多く含むニカワは接着剤として古くから利用されてきました。とくにニベという魚から取ったニカワは高級品とされ、いまでも伝統工芸で使われています。「ニベもない」ということわざとはうらはらに、江戸時代にはこの魚の耳石は鼻炎のくすりや精力剤としても重宝されていたそうです。耳石の主成分は炭酸カルシウムで貝殻と同じ成分です。西洋医学が日本に広まった日露戦争のころにはリン酸カルシウムが主成分のカルシウム剤が販売されました。次亜燐(じありん)と名づけられたそのくすりは、筋骨たくましく体格を向上させ、強い兵隊さんを作るくすりとして宣伝されました。当時の看板には立派な体格の代表格としておすもうさんの絵が描かれています。秋は文化の季節でもあります。11月16日にはくすり博物館講演会「薬として徳川幕府に献上された魚の耳石」が開催されます。スタッフ一同ご来館お待ちしております。
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