本草学は、生命維持や健康のため用いてきた、さまざまな植物や動物、鉱物の産地や薬効などを研究する学問として紀元前の中国で発生しました。日本では江戸時代に最も発展しました。
日本における初期の本草学では中国の書物を教科書としました。このため、まず記載されている産物が何であり、日本にも存在するかを研究をすることが日本の本草学の始まりとなりました。いわば、中国文献の日本向け解説書の編纂が主目的で、平安時代ころから盛んに行われるようになりました。
『倭名類聚抄』 源順著承平年間(931-8)頃成立元和3年(1617)刊行のもの
日本の本草学は薬となる動物・植物・鉱物について、日本産の同一物の有無や、対応する和名の研究がなされました。その先駆けとなったのが深江輔仁(すけひと)の『本草和名』です。
『本草和名』 深江輔仁著延喜18年(918)頃成立寛政8年(1796刊行のもの)日本最初の本草薬名辞典。『新修本草』所載の漢名薬物に対して、和名をあて比較されている。
中国、明の李時珍は、当時の主要な800種の参考書物と彼自身が行った実物収集と研究結果を『本草綱目』全52巻にまとめました。慶長9年(1604)長崎で『本草綱目』を入手した朱子学者・林羅山はこれを徳川家康に献上しました。以後、『本草綱目』は多くの本草学者によって研究され、医家、儒学者らにも影響を与えました。
『本草綱目』 李時珍著万治2年(1656)刊行中国の代表的な本草書。万暦24年(1596)に初版刊行
李時珍(1518-93)
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