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館長のトリビア
館長のトリビア
雑草の生き抜く力にふれる (2017.07.21)


セイヨウタンポポ
春に見かけるセイヨウタンポポ(キク科・外来種)は花が咲くと、ハチやチョウが花粉をつけなくても、種を作るので、1個の種から6ヶ月後には100万個のタネを作ります。

 生き抜く力とたくましさの象徴として雑草魂という言葉を聞く機会がありますが、この言葉を体感する機会がありました。今年の4月からくすり博物館では、薬草園美化のため、雑草の草取りを職員全員で始めました。スタートして感じたことは、抜いても、取っても1週間後にはまた生育している雑草の生命力の強さでした。誰にも頼まれず、雑草たちは土があれば、いつのまにか芽生え、抜かれても、踏まれても、しぶとく生きています。なぜ雑草はこんなに生命力が強いのか、その仕組みはどうなっているのか興味が湧き調べてみました。
 雑草の生命力の源で共通しているのは、自分の生育にあった場所に生え、その生活に強く適応した植物で、その上に多種多様な生き残る能力を保有していました。

[雑草の多種多様な能力]
1   強い繁殖力:スギナ、セイヨウタンポポのように無性生殖でも個体数を増やせる
踏みつけに対する耐性:踏みつけに対して耐久力をもつ
一世代の成長に融通が利く:条件が悪ければ小さな個体で花をつけ、種子をつくる
休眠に適する構造:条件が悪い時は休眠し、全部は発芽せず、一定数は休眠する
作物への擬態:田畑では作物に擬態し、駆除の目を潜り抜ける

 雑草の生命力の仕組みを調べたので、植物はどうなっているのか調べてみました。なんと、植物は地球上に30万種類以存在し、植物の生き残り戦略は雑草以上に多種多様でした。薬草や野菜のように人間に栽培させるだけでなく、自分たちだけで生き残るために多くの仕組みを保有しておりました。

[植物の多種多様な生き残りの仕組み]
1   雑草のような旺盛な繁殖能力を保有するグループ(タンポポ・スギナ等)
自分の体は自分で守るために(棘や渋みや辛みで体を守る:バラ・ヒイラギ等)
病原菌に感染されない(ネバネバ液や香りでカビや病原菌を退治:ゴム等)
虫や動物に食べつくされないため(毒で身を守る:トリカブト・スズラン等)
紫外線処理のしくみ(ビタミン・ポリフェノールで活性酸素除去:ローゼル等)
痩せた土地でも生き抜く(食虫植物は虫から窒素を摂取:モウセンゴケ等)


スギナ
初夏のスギナ(トクサ科)は、タネは作らないが胞子で増えるシダ植物で、胞子を作るのは地下茎から出るツクシで、スギナの根は深く1メートルの深さまで伸びています。
 私たち人間は、生きるためのすばらしい仕組みや能力を身につけています。しかし、動くことのできない植物も生きるための仕組み(子孫を残す)を保有しております。植物は地上で生活を始めてから既に4億年で私たちの大先輩です。ぜひ、身近な場所に植物を置き、花を見たり、香りをかいだり、葉に触れたりし楽しんでいただき、さらに動くことのできない植物から、どうして生き抜いてきたのか、その生きるための仕組みも想像してみてください。きっと、仕事や生活で気持ちが落ち込んだ時に、新しい意欲を掻き立ててくれると思います。「植物との共存・共生」の生活お勧めします。
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