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酒を愛しむ(2004.02.06)
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館長です

 「酒は百薬の長」か、はたまた「精神異常水(差別用語に配慮)」か。ひたすら酒を愛しつづけている筆者にとっては、前者であって欲しいが、浴びるほど酒を飲み、成人式をぶち壊す一部の新成人の様は、後者と言われても仕方あるまい。しかし、昨今、酒の効用が度々喧伝されている。その代表的な事例は、赤ワインのポリフェノールであり、その抗酸化作用がもてはやされている。ポリフェノールとは、フェノール性の水酸基を持つ植物成分の総称で、数千種類あるといわれている。アントシアニン、タンニン、カテキン、ケルセチンなどもその一部で、赤ワインはほんの一例に過ぎないのに。焼酎に血液をサラサラにする作用があるという最近の情報に、焼酎党である筆者は、「飲みすぎは効果なし」の部分を無視し、密かにほくそ笑んだ。

 中国・唐代の代表的詩人は李白と杜甫である。生まれも性格も、作風も全く異なった天才詩人の二人は、同時代に生き、出会い、親交を結んだ。
 李白は蜀(中国・四川省)の人で、字は太白、諸国を放浪し各地の知識人と交遊を深めたが、特に、酒好きで有名である。どのくらい好きか・・・杜甫が八人の有名人の酔態を詠じた「飲中八仙歌」の中に、李白に関する四句がある。
 李白一斗詩百篇 李白 一斗 詩百篇
 長安市上酒家眠 長安の市(さかり場)のほとり 酒家に眠る
 天子呼来不上船 天子 呼び来たれども 船に上らず
 自称臣是酒中仙 自ら称す 臣(自分)は是れ酒中の仙
「李太白 一合づつに詩を作り」という江戸時代の川柳がある。一斗で百篇作るのであれば、一篇あたり一合だなというシャレた計算である。
 ところで、天子とは玄宗皇帝で、李白は翰林供奉(かんりんぐぶ、皇帝直属で文章の起草などを行う)という官職にあったが、後に、玄宗皇帝が楊貴妃を寵愛し、楊一族を重用したことで起きた「安史の乱」に巻き込まれ流罪となる。
 豪放磊落、自由奔放、天真爛漫、飄逸、浪漫主義、無頓着、ネアカ・・・等々多くの形容詞がつけられる李白は、杜甫の「詩聖」とならび「詩仙」とも呼ばれたが、「酒仙」でもあったことを杜甫が証明している。李白自身の詩にも「月下独酌」といううれしい作品がある。

 私事で恐縮だが、新年早々に突然訃報が舞い込んだ。大学時代の恩師(筆者夫婦の仲人でもある)が逝った。恩師もまたこよなく酒を愛した一人である。サイエンスは勿論、飲むほどに酔うほどに人生を語り、恋愛論をぶち、遊びも教わった。また一つ、心の拠り所が消えた。・・・まとまりのないコラム、ご容赦を。
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