くすりの博物館
サイト内検索
もうひとつの学芸員室
人と薬のあゆみ 薬草に親しむ 内藤記念くすり博物館のご案内 もうひとつの学芸員室くすりの博物館トップページへ


遊ぼう!動かそう!中野コレクション
見てみて!くすり広告
パネルクイズ「資料でふりかえる鍼と灸」
やってみようツボ体操
薬と秤量によって毒にも薬にも
くすりの夜明け−近代の医薬ってどんなものだったんだろう?−
江戸に学ぶ からだと養生
綺麗の妙薬〜健やかな美と薬を求めて〜
病まざるものなし〜日本人を苦しめた感染症・病気 そして医家〜
江戸のくすりハンター 小野蘭山 −採薬を重視した本草学者がめざしたもの−
学芸員のちょっとコラム
館長のトリビア
学芸員のちょっとコラム
鼻を高くする秘伝のおまじない (2010.09.03 野尻佳与子)

 顔の真ん中についている鼻、鏡で自分の鼻を見つめながら、もしも、鼻筋が通った上品な鼻だったならば・・・、と、高い鼻に憧れをいだく女性は少なくないことでしょう。「クレオパトラの鼻がもう少し低かったら歴史は変わっていただろう」という例えがあるように、鼻の高さが女性の生き方や人生、国の歴史を左右することがあったかもしれませんね。

 現在は、化粧品と化粧道具の進歩で、顔の欠点をカバーしたり、美しく見せる方法はたくさんあります。メイクアップアーティストの方によれば、「化粧は見た目の錯覚を利用したもので、いかに自然に見せるかが技の見せどころ」だそうです。
 江戸時代の女性も、鼻を高く見せる工夫を凝らしていたことが、江戸時代の美容書『都風俗化粧伝(みやこふうぞくけわいでん)』からもよくわかります。
 「鼻は顔の中でも中央にあるので、最も目につくものである。鼻筋の通っているのが望ましい。鼻低き人の鼻筋が通っているように見せるには、眉毛と目の中ほどより、鼻の柱へ通して他より少し濃く塗り出し鼻の両脇へ向かって塗る。鼻筋が通って見えれば、低い鼻も高く見えるようになる。」と書かれています。白粉の塗り方によって鼻筋が通って見えるという技法でした。
 現代においても同様のテクニックがあります。いうならば、ノーズシャドウ、鼻の鼻骨の部分には明るい色を、くぼんだ部分には、影になるような濃い色を塗って立体感を表現するという化粧技術です。実際の見ための凹凸よりも、写真に写ったときに効果的で、陰影がついて鼻が高く見えるため、こうしたノーズシャドウとハイライトを積極的に取り入れている俳優さんも多いようです。

 このような化粧技術だけでなく、おまじないによる方法も、『都風俗化粧伝』には載っています。まずは、おまじないを実行する上での心構えが記されています。「世の中には、まじないを軽蔑して信じない人もいるが、これは深々秘々の神法とされているもの、霊験の著しきもので、浅はかな凡人のはかり知ることができないものもある。これは、中国の神農に始まり、日本では少彦名命が民衆を救うために行ったもので、速やかに効果を発揮する神法であり、多くの人が試みたところ効果があった」というものです。
 その上で、まじないの具体的方法は、「かわや(トイレ)に入って心を静め、念仏なりとも題目なりとも、その人の信じる方を唱えながら、右の手の親指と人さし指、中指の三つの指で自分の鼻の両眉の中央の下より、鼻柱を鼻先まで高く揉み上げるように挟んで揉むと、鼻が自然と高くなる。決して疑いの心があってはならない」とされています。

 こうした、江戸時代より伝わる鼻を高くするおまじないは、トイレに宿る神様のなせる業かもしれないなんて考えてしまいますね。古来よりトイレ掃除をすると綺麗になれるとか、綺麗な子を生むことができるという、言い伝えもあります。私もこっそりトイレで挑戦してみたいと思います。


都風俗化粧伝 文化10年(1813)
戻る
ご意見ご感想著作権について Copyright(C), Eisai Co., Ltd. All rights reserved.