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株主・投資家の皆さまへメッセージ

 オバマ政権によるヘルスケアリフォーム政策に代表されるごとく医療へのアクセスの改善、公平性の担保は、政治・社会の最も優先度の高い課題となっております。また、中国やインドなどに代表される新興国市場においては、顕著な中間所得層の拡大や疾病構造が旧来の感染症を中心としたものから癌や糖尿病に代表される非感染症にシフトしつつあるなど、大きな変化が起こり始めております。
 一方、H1N1インフルエンザに代表されるパンデミックな疾病拡大のリスクはいわゆる先進国や発展途上国を問わず存在しており、その対応についても怠ることができません。私共は定款にわれわれの役割は患者様価値の増大にあることを記載しており、この目的をいまだ満たされていない医療ニーズを新しい薬剤で充足すること、高品質薬剤を安定的に供給すること、有効性と安全性についての薬剤情報を適確に伝達することにより実現していこうとしております。エーザイが展開するすべての国やエリアにおいて、この使命の重要性を強く認識しております。

 当社は薬剤を必要とされている一人でも多くの患者様のベネフィット向上に貢献できるよう、各国の社会、経済、医療環境に合わせたアフォーダブル・プライシング・ポリシーを制定しております。このポリシーに基づき、インドでは2005年以来、アルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト」(インドでのブランド名「Aricep」)、プロトンポンプ阻害剤「パリエット」(同「Parit」)を、インドの社会、経済、医療環境に合致したアフォーダブル・プライスで提供しております。さらに、本年2月には、慢性B型肝炎治療の新薬である「REVOVIR」(一般名「クレブジン」)をフィリピンにおいて既存他社ブランド品の約2分の1の価格で発売し、薬剤を必要とされている患者様にとってそれを手にすることができる価格での持続的な製品供給の実現に継続的に取り組んでおります。
 このようなアフォーダブル・プライスによる製品提供を持続的に継続していくためにはそれを可能とする低コストによる運営の基盤が必要となり、当社は全社国際プロジェクト「LCOP-AP」(Low Cost Operations for Affordable Pricing:アフォーダブル・プライシングを実現するための低コスト運営)を開始してあらゆる費用構造の見直しに着手いたしました。インドのバイザッグに建設した生産・プロセス研究拠点「エーザイ・ナレッジセンター・インド」は、新興国・発展途上国への製品供給基地として既存主力製品の原薬・製剤の生産を行うほか、次期グローバル製品の原薬プロセス研究や原薬・製剤の生産を行う予定であり、今後のアフォーダブル・プライシング実現に向けた重要な機能を担ってまいります。

 製薬会社の使命である新薬開発に関しては、画期的新薬のタイムリーな創出に向けて、昨年7月に新しい創薬体制エーザイ プロダクト クリエーション システムズ(EPCS)への移行を果たしました。旧来の大規模化していた研究開発体制を、疾病領域ごとに新薬の発明発見から承認取得までの責任を担う6つのプロダクト クリエーション ユニットとそれらを支える重要創薬技術を担当する6つのコア ファンクション ユニットに再編成し、約2,000名のグローバルの研究開発部門社員をそれぞれのユニットに再配置すると同時に、部門の名称を研究開発からプロダクト クリエーションに改めました。
 このEPCSの目的はただ一つ、「開発期間の短縮」であります。当社は自社内に低分子化合物とバイオロジクス(生物学的製剤)による創薬能力を有する強みを活かし、この新たな自律的な体制の下で各ユニットが製品創出におけるオーナーシップとモチベーションを高めることで、生産性・効率性の向上へとつなげてまいります。

 当社は委員会設置会社であり、取締役11名のうち取締役会議長を含む7名が社外取締役で構成されており、執行役を兼任する取締役は代表執行役社長のみとなっております。取締役会は完全に株主利益を代表した会議体となっており、取締役会から業務執行の委任を受けている社長を含めた執行役は持続的な株主価値の向上を目的として、患者様価値の実現に向けた業務の執行に邁進しております。

 また、当社はバランスシートマネジメントを重視した経営により、最適資本構成を追求し、ROEは資本コストを大幅に上回る15%レベルをめざしてまいります。株主還元につきましては、株主資本コスト以上のキャッシュを株主の皆様に還元するとの考え方から、DOE8%以上の維持を目標とし、各年度に創出されたキャッシュ・インカムのおよそ3分の1を株主の皆様に還元させていただく方針をもっております。

 本年11月には、当社グループの成長を支えてきた「アリセプト」の物質特許が米国で満了を迎えますが、一方で、これまで買収等を含めて戦略的に強化してきた、がん・クリティカルケア領域が大きく成長し、新たなフランチャイズを形成してきております。2009年度はアルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト」の23mg製剤の米国での申請、自社創製の初の抗がん剤となる「エリブリン」の日・米・欧三極同時申請を果たすなど、これまでの自社研究の成果が力強く現れた、エポックとも言える一年となりました。またリージョンとしては、屋台骨である日本における四事業連携による高成長、中国に代表されるエマージングエリアでの急速な成長を果たしており、フランチャイズ領域とリージョンの最適なバランスにより、今後数年の業績堅持と、豊富なパイプラインを背景とした2013年度以降のさらなる成長に向けた中期的なロードマップも視野に入ってまいりました。

 2010年度は、これらの新製品を一日も早く患者様にお届けするべく、万全なる準備を以って上市に向かう所存でございます。株主の皆様の変わらぬご支援、ご指導、ご鞭撻をお願い申しあげまして、ご挨拶とさせていただきます。

2010年7月

署名: 内藤 晴夫
代表執行役社長(兼)最高経営責任者(CEO)