マーケティング

75 マーケティング活動を実施している国と地域の数
地域特性を考慮してニーズへの対応を最大化

エーザイは、hhcの企業理念のもと、患者様や生活者の皆様、医療関係者に潜在している真のニーズを表出化し、アンメット・メディカル・ニーズの充足を導くことをめざし、地域特性に合ったマーケティングをグローバルに実施しています。

アメリカス

  

Teresa Cronin

  

Senior Director, Corporate Advocacy and Americas Region hhc Administrator, Eisai Inc.

   

オンコロジービジネスグループにおける成長とパイプラインの進展および患者様、医療関係者に資するイノベーションの現状

hhc 理念を掲げてのがん領域での取り組みは、患者様のために革新が続き、かつてないほど強力になっています。

米国で約20,000人の患者様に処方された抗がん剤「レンビマ®」は、アメリカスの増収を牽引しました。特定の種類の進行性子宮内膜がんの患者様を含め、7,000人以上の新規患者様へ「キイトルーダ®」との併用で投与されるようになり、大きな増収が続いています。私たちは、既存の適応症における成長の継続に確信を持っています。さらに、主要な学会である米国臨床腫瘍学会泌尿器がんシンポジウム(ASCO-GU)で発表した腎細胞がんや米国婦人科腫瘍学会(SGO)で発表した子宮内膜がんのほかにも、肝細胞がん、メラノーマ、肺がんなどにおける肯定的かつ重要な臨床試験結果に基づいた追加承認取得を見越し、必要な準備を始めています。エーザイのマーケティング活動において、患者様を中心に据え、革新とパートナーシップを通じて大きな影響を与えることをめざしています。

エーザイのオンコロジービジネスグループは最近、二つの大きな患者様サポートイニシアチブを米国で開始し、肝細胞がんと子宮内膜がんにおける疾患啓発と理解の促進をめざしています。肝細胞がんにおいては、アジア系アメリカ人、ラティニクス(Latinx)における医療的ケアの格差に対処することを目的としたキャンペーン「Culture of Care」を開始しました。各コミュニティの患者様支援団体からのご意見を受けての当該キャンペーンは、肝臓の健康と肝細胞がんのリスクに焦点を当てた純粋な啓発活動で、ライブによる教育イベントの他、非言語の手法も活用しました。

もう一つのキャンペーンは「Spot Her」です。1年間に65,000以上の疾患例が記録され、女性のがんで4番目の発生率とされる子宮内膜がんの兆候および症状の理解を促進させるための取り組みです。この取り組みは、米国の非営利団体であるSHARE Cancer Support(SHARE)、Facing Our Risk of Cancer Empowered(FORCE)、Black Health Mattersと提携し、一般的でありながら未だ十分には認識されていない女性のがんに対する意識を高めるために始めたものです。「Spot Her」では、疾患啓発を進めてコミュニティ形成を支援し、この重要な問題に立ち向かうすべての女性の力を取りまとめることをめざしています。

加えて、アメリカでの人員増加を受けて新しい働き方に迅速に適応し、2020年度には、COVID-19下でも複数のチャネルにおいて医療従事者と積極的に関係を築きました。新しいプラットフォームの開発、ピア・ツー・ピア(P2P)プログラムのリモート実施、各医療関係団体との貴重な協力関係を維持するための活動等に機敏に取り組みました。さらに、会社として、リアルとバーチャルが併存する環境での販売担当者の活躍を支援すべく、チームのスキル強化に投資を続け、営業マニュアルの刷新や、コーチングやトレーニングに関する大規模なリモート会議も開催しました。

医療現場で活躍する社員と、マーケティング、法務、コンプライアンス、情報技術を専門とするリモート勤務の社員で構成される私たちのチームは、医療従事者との関わり方のさらなる最適化をめざし、デジタルソリューション戦略を進展させています。2021年度初頭に新たなプラットフォーム「Eisai Engage」を展開し、エーザイの医薬情報担当者(MR)、メディカルサイエンスリエゾン(MSL)、医療情報に対するバーチャルアクセスを提供します。「Eisai Engage」は「レンビマ®」やその他の製品に関する重要なツールやリソースへの簡単なアクセスを可能とし、顧客とのエンゲージメントを促進します。また、患者様、介護者、医療従事者の皆様と「レンビマ®」との共存をサポートするデジタルツールを追加する予定です。疾病の予防、管理、治療をサポートするいわゆるデジタル治療を含め、科学的証拠に基づいたソリューションをお届けする私たちの戦略は、中期経営計画「EWAY Future & Beyond」の方向性と一致しています。

 治療ラインに関わらず全身療法後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応な高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability-high: MSI-H)を有さない、またはミスマッチ修復機構欠損(mismatch repair deficient: dMMR)を有さない進行性子宮内膜がん

新たなプラットフォーム「Eisai Engage」

エーザイのオンコロジービジネスグループの将来は、堅固なパイプラインのもと、複数の上市を目前に、活気に満ちています。Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.と協働している、「レンビマ®」と「キイトルーダ®」の併用療法については、現在13種類のがんにおける20を超える臨床試験が進行中です。
私たちは科学の力で革新的なソリューションをあらゆる医療関係団体とがん患者様に提供し、支援することに、引き続き尽力していきます。

  

  

China

  

Yanhui Feng 

  

常務執行役
衛材(中国)投資有限公司 総経理(兼)衛材(中国)薬業有限公司 総経理

   

30年にわたるビジネス基盤がもたらす成長

エーザイの中国におけるビジネスは、1991年に瀋陽で合作会社を設立してから30年の歴史を有し、アルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト®」、末梢性神経障害治療剤「メチコバール®」等を主力品として成長してきました。中国では2018年より、政府主導による新薬承認審査の加速化、革新的新薬の早期保険収載などの制度改革が進展しています。エーザイ中国は、これらの改革を追い風に、抗がん剤「レンビマ®」が2018年に肝細胞がん適応で承認を取得したのを皮切りに、抗がん剤「ハラヴェン®」、抗てんかん剤「フィコンパ®」の承認を取得し、新薬であるグローバルブランド計3品を販売しています。中国の肝細胞がん患者様は世界の約半数を占めるといわれ、「レンビマ®」は発売後3年で、エーザイ中国の売上収益第一位の製品にまで成長しました。

「レンビマ®」については、発売開始直後より、患者様支援プログラム(PAP)の導入により、患者様負担の軽減に尽力してきました。並行して、患者様アクセスの拡大に向け中国政府の当局との交渉を重ねてきました。「レンビマ®」と「フィコンパ®」は、半年にわたる準備を経て臨んだ当局との交渉の結果、2020年版国家保険償還薬剤リスト(NRDL)に採用されました。このたび保険適用が開始されたことより、患者様のアクセスが飛躍的に拡大し、本剤を必要とされる多くの患者様へお届けすることが可能となりました。

一方、中国ではジェネリック医薬品の品質向上策と普及推進策も進められています。2018年12月より、国立病院の医薬品を対象に政府集中購買制度が導入され、基準薬および、基準薬との一致性評価を取得したジェネリック医薬品が入札に参加可能となっています。「メチコバール®錠」は、2020年8月に政府集中購買の入札に日本企業として初めて成功しています。これにより当社が製造する「メチコバール®錠」を中国全土の患者様に継続的にお届けすることが可能となりました。2015年12月に買収したジェネリック医薬品会社「衛材(遼寧)製薬有限公司」が製造する消炎鎮痛剤「ロキソプロフェン」は、当局から基準薬との一致性評価を取得し、2021年2月に政府集中購買の入札に成功しました。高品質なジェネリック医薬品により、今後も力強い市場成長が見込まれる内陸部や地方の中小都市および中小病院に価値のある薬剤をお届けします。

中国では高齢化が進んでおり、2019年末時点での60歳以上の高齢者人口は、総人口の約18.1%にあたる2億5388万人に上り*1、高齢者向けの高質な医療・介護に対するニーズが高まっています。一方、2012年からは民間医療保険下でのオンライン病院が解禁されるなど、デジタル技術を活用した医療分野におけるオンライン化が急速に発展しています*2

エーザイ中国は2020年10月に、京東集団(JD Group)のJD Health(京東健康)と合弁会社「京颐衛享(上海)健康産業発展有限公司」を設立しました。JD HealthはJD.comのグループ会社で、ユーザーの生涯にわたるあらゆる健康管理に資するプラットフォームとして、サプライチェーンとデジタル技術に依拠した医療サービスを提供しています。新会社は、エーザイ中国とJD Healthの強みを活かして、まずは認知症を対象として、中国国内を対象とした多様な情報・医療・介護サービスから、最適なサービスを選択・利用できる高齢者向けのワンストップ健康サービスプラットフォームを構築します。そして、医療、介護における高齢者とそのご家族のニーズにお応えするために継続的に事業を拡大していきます。“Internet+”*3とデジタルトランスフォーメーションを活用し、医療分野から日常生活に至るまでの「The People」への貢献による価値創造をめざします。

*1 中国国家統計局データ:: http://www.stats.gov.cn/english/PressRelease/202002/t20200228_1728917.html
*2 Description of an online hospital platform, China Bulletin of the World Health Organization 2019; 97:578-579. http://dx.doi.org/10.2471/BLT.18.226936
*3 Internet +(互聯網+):工業、金融、エネルギー、健康、教育、スマートライフなど、既存産業や社会生活をインターネット技術と掛け合わせ、経済の活性化や課題解決を図るために2015 年に制定された中国におけるIT の中核的政策

経済成長著しいベトナムにおける事業の拡大    
2020年9月、エーザイは約9,762万人の人口を擁する経済成長著しいベトナムに、医薬品販売会社Eisai Vietnam Co., Ltd. (エーザイ・ベトナム)を設立しました。
ベトナムの医薬品市場は東南アジア諸国連合(ASEAN)においてタイ、フィリピンに次ぐ規模で、5年以上にわたり二桁成長を維持しています。今後も、経済成長による中間所得層の拡大や非感染性疾患の増加等により、継続的な成長が見込まれています。
当社は、ベトナムにおいて1990年代初頭から駐在員事務所を開所し、現地代理店を通してビジネスを展開しています。1995年にホーチミン市に駐在員事務所を開設し、主にプロトンポンプ阻害剤「パリエット®」、筋緊張改善剤「ミオナール®」、末梢性神経障害治療剤「メチコバール®」などを販売しています。グローバルブランドでは、抗てんかん剤「フィコンパ®」を2019年10月、抗がん剤「レンビマ®」も2020年9月より発売しています。
エーザイ・ベトナムの設立により、ベトナムにおける自社による医薬品販売体制の充実を図り、革新的な新薬をより多くの患者様にお届けし、患者様とそのご家族のベネフィット向上に貢献していきます。