リンパ系フィラリア症の診断キット提供に関する新しいパートナーシップへの参画

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2016年2月17日掲載

世界保健機関(WHO)が主導するリンパ系フィラリア症(LF)の制圧活動の一環として、集団投薬(MDA)によるLF制圧の達成度を評価し、MDAを終了する判断に用いるための診断キットを無償提供する官民パートナーシップが開始されました。エーザイもこの新しいパートナーシップに参画いたしました。

このパートナーシップでは、ビル&メリンダ・ゲイツ財団とLF制圧のための薬を無償提供している製薬企業3社(エーザイ、GSK(グラクソ・スミスクライン)社、Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.)が、LF診断キット(FTS; Filariasis Test Strip)の開発段階からWHOとキット改良についての検討をしてまいりました。今後、世界中の必要な国々に診断キットを供給するための資金を共同で拠出いたします。

上記パートナーは、2014年4月にパリで行われたロンドン宣言のフォローアップ会議にて、これまでのLF診断キットから改良された新しいFTSの提供計画を表明しておりました。その後、FTSの開発および製造を担当するAlere社とWHOの間で必要国への供給に向けた調整および準備が進められ、2015年内に供給が開始され、2016年2月にWHOより、診断キット提供に関するパートナーシップが正式に発表されました。

LF蔓延地域においては、通常5年間をかけてMDAを行いますが、それだけでは“制圧”には至りません。制圧の宣言は、MDA後さらに2~4年間フィラリアの感染状況を把握するための定点調査TAS(Transmission Assessment Survey)を経て、初めて成し遂げられます。FTSは定点調査対象地域における住民のフィラリア感染率を測定するために使われ、LF制圧はその感染率の推移をもとに判定します。2020年のLF制圧に向けて、今後TASが大規模に行われることが予想されますが、これまでの診断キットは、低温での輸送と保管が必要で、途上国における流通管理が課題となっていました。今回のパートナーシップで供給する新しいFTSは、キットの安定性を改善し流通面や検査の操作性を改善するとともに、コストの低減も実現しました。この新しいFTSは、世界中の必要な場所でのTASを可能にし、MDAを終了するか継続するかを決定するためのとても重要な科学的根拠を提供します。さらにTASの結果は、WHOとドナーの間での薬剤供給計画の精度を上げるためにも用いられます。

現地へのFTSの供給は官民パートナーシップの支援をもとにWHOが提供する場合と、蔓延国を支援する各国政府の関係機関(DFID(英国国際開発省)、JICA(国際協力機構(日本))、USAID(米国国際開発庁)など)を通じて提供する場合がありますが、FTSの必要国と必要数の把握はWHOが一括して行います。WHOは、2016年の必要数を年間75万キットと予測しています。

LF制圧に向けて、エーザイはDEC錠の供給とともに、新薬開発のための共同研究、制圧確認のための診断キットの供給、hhc活動を通じてのLFの啓発活動やDEC Project Managerによる活動を通じた包括的なアプローチにより早期の疾患制圧への貢献を続けてまいります。

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