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医薬品アクセス

当社の基本理念

hhc理念を世界に向けて

2015.10月改定

 当社グループは、研究開発型のグローバル製薬企業として、世界各国において健康の向上に貢献しています。患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献することは、当社グループのhhc理念の基本であり、当社の定款、ならびに世界各国で展開する事業にしっかりと根付いています。hhc理念の実現に向け、当社グループは知の創造―SECI(Socialization, Externalization, Combination, Internalization)モデル*1、特に「共同化(Socialization)」が重要と考えています。患者様と接することにより、患者様の喜怒哀楽を理解することは、hhc理念の実現に不可欠です。当社グループでは、社員が就業時間の1%を用いて、「共同化」、とりわけ患者様と共に過ごすことが推奨されています。

 今日、貧困や医療システムの不備などから、必要な医薬品が必要とされる患者様のもとに届かないという問題を医薬品アクセス問題と言います。世界中には、1日1.25ドル以下で生活する最貧困層が12億人*2以上、さらに1日2ドル以下で生活する人々が12億人*2いると推定されています。これらの約24億人以上の人々の中の多くが、有効的な治療法があるにも関わらず、必要な医療を受けることができず、必要な医薬品を入手できない状況にあります。

 このような状況の中、当社グループは、研究開発型グローバル製薬企業の使命は、革新的な医薬品を創出し世界の健康と医療に貢献することであると考えています。即ち、最新生命科学に基づく医療ニーズを満たす新薬開発と、必要とされる医薬品を必要としている人々にいかに届けることができるかという医薬品アクセスの確保です。

 当社グループは、グローバルヘルスにおけるこの挑戦において、長期的且つ、持続的な解決法を開発し、実行していきます。当社グループの戦略は、さまざまな官民パートナーシップモデルを通して、医薬品のアフォーダビリティー(affordability:「購入のしやすさ」)、アベイラビリティー(availability:「入手の機会」)、アドプション(adoption:「服用の意向」)の向上、その基盤となるアーキテクチャー(architecture:医薬品アクセス改善のための医療インフラ)の整備を図り、医薬品へのアクセスを改善していくことです*3

*1
Ikujiro Nonaka, Noboru Konno, The concept of “Ba”: Building foundation for Knowledge Creation. California Management Review Vol 40, No.3 Spring 1998

*2
世界銀行のデータより(2013年)

*3
Frost LJ, Reich MR, Access: How Do Good Health Technologies Get to Poor People in Poor Countries? Cambridge: Harvard Center for Population and Development Studies, distributed by Harvard University Press, 2008

医薬品アクセス向上に向けた「4つのA」

 医薬品アクセスの問題は、一製薬企業の努力では決して解決できません。製薬企業だけではなく、様々な組織や、団体が国際的に協力して解決しなければならない課題となっています。
 当社グループは、政府、世界保健機関(以下、WHO)などの国際機関、他の民間企業、非政府組織(NGOs)や非営利団体(NPOs)などとの官民パートナーシップのもと、世界における医薬品アクセスの改善に向け、積極的に貢献していきたいと考えています。
 医薬品アクセスを改善するには、単に医薬品を供給するという取り組みにとどまらず、医療そのものから、さまざまな観点で活動することが求められています。それぞれの地域における患者様や社会にとって購入可能な価格で医薬品が供給され、患者様が十分にご理解した上で治療方針の決定に参画し、その決定に従って医療が行われること(adherence)が必要であると考えています。あわせて、中長期的な視野で継続的に医療が提供されることを前提とした取り組みも重要であると考えています。

 当社グループでは、世界の医薬品アクセスを改善するために、以下の5つの分野からなるアクションプランを策定し、積極的に取り組んでいきます。

  • プロダクトクリエーション(アベイラビリティー)
  • 戦略的ソリューション(アフォーダビリティー)
  • キャパシティビルディング(アーキテクチャー)
  • セーフティーアシュアランス(アドプション)
  • 長期的投資(アベイラビリティー)

 当社グループは、この医薬品アクセスが当社の理念であるhhcと融合し、全社員がhhcマインドを持って医薬品アクセス活動を進めることに努めていると確信しております。そして、この指針が、医薬品アクセスの改善を効果的に推し進めることに繋がると考えています。

1.プロダクトクリエーション

 当社グループでは、研究開発活動を「プロダクトクリエーション」と位置づけています。そのめざすところは、製品の創出において、より患者様志向を明確にすることにあります。患者様の喜怒哀楽を理解し、患者様が明示的に感じられている問題、暗黙的に持たれている課題に対して、革新的な治療を提供することにより、患者様の生命・生活の質を改善することを目的としています。疾病構造、医療ニーズおよび医療制度は国・地域によって異なるため、それぞれの国・地域の市場ニーズを踏まえ、それに合致した製品の開発・供給に取り組んでいます。
 当社グループでは、医薬品アクセスの改善に向け、発展途上国の疾病(Diseases of the Developing World; DDW)に対する治療薬の創製をめざしたプロダクトクリエーション活動にも積極的に取り組んでいます。ここで対象とする疾患は、感染症のみならず、感染症以外の疾患も含まれます。感染症については、マラリアやシャーガス病などの「顧みられない疾病(neglected disease)」を対象として、自社における創薬活動を推進しています。研究開発において適切な経験・知識・技術を有する提携先が得られた場合には、医薬品開発パートナーシップ(Product Development Partnerships; PDPs)を締結し、新薬の開発支援を行います。PDPsは、他の製薬企業との協力ならびに公的資金や寄付金を活用し、発展途上国における「顧みられない疾患」に対する治療薬の研究開発に対して必要なインセンティブを付加する試みです。
 現在、当社グループでは、マラリア脳炎への効果が期待できる化合物の自社開発を進めるとともに、スイスのジュネーブに本部を置く独立非営利財団Drugs for Neglected Diseases initiative;(DNDi)と提携し、シャーガス病に対する新たな治療薬の開発プロジェクトを支援、推進しています。非感染症についても新しいビジネスモデルにより、神経疾患、ガンを対象とする医薬品へのアクセスを向上させます。
 さらに、当社グループ製品について、適正な契約を前提とした非独占的ライセンス許諾に関しても前向きに検討していきます。また、新薬開発をめざす公共・民間、ならびに営利・非営利の研究機関との原料供給に関する提携や、適正な契約を前提とした、研究機関への自社化合物ライブラリーの無償提供にも取り組んでまいります。

2.戦略的ソリューション

 当社グループは、持続的な解決法となるビジネスモデルにより医療の質の向上を実現していきます。官民パートナーシップ(Public-Private Partnerships: PPPs)は新しいビジネスモデルで、民間企業とNGOsやNPOsを含めた公共機関や自治体とのパートナーシップにより、それぞれの機関が有するスキルやリソースを新たな方法で融合することにより、発展途上国における医療の質の向上に貢献するものです。
 当社グループでは、PPPsにより、NGOsやNPOsを含めた公的機関と民間企業を新たな関係で結びつけ、医療サービスの向上や医薬品へのアクセスを改善するとともに、公的機関と民間企業のそれぞれの目標を達成し得るようなビジネスモデルを開発・導入していきます。一例として、当社グループは開発途上国の感染症制圧に向けて、日本からの新薬開発を進めるための官民パートナーシップであるグローバルヘルス技術振興基金(以下GHIT Fund)の立ち上げに参画いたしました。現在、当社グループにもGHIT Fundの助成金を受けて開発している様々なプロジェクトがあり、今後、それらのプロジェクトが製品化されたときには後発開発途上国(Least developed countries)や中・低所得国(low and middle income countries)において、無利益/無損失(No Gain, No loss)で製造・販売していくことに合意しています。また、当社グループでは、アフォーダビリティーを向上させ、医薬品を必要とされている一人でも多くの患者様のベネフィット向上に貢献するため、高所得国を除く国々における社会、経済、医療環境に基づいて、必要とされる医薬品を購入しやすい価格で供給するアフォーダブル・プライシング(affordable pricing)を取り入れています。現在、インドやフィリピンなどの発展途上国において、アルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト」、プロトンポンプ阻害剤「パリエット」、てんかん治療剤「ゾネグラン」ならびに慢性B型肝炎治療剤「REVOVIR」(一般名:クレブジン)に関しては、それぞれの国・地域の社会、経済、医療環境に適した価格で製品を供給しています。複数の価格設定が可能な国においては、医療機関のタイプ、すなわち患者様の層別に、適した価格を設定することを考慮しています。その代表的な事例が新規抗がん剤「ハラヴェン」」(一般名:エリブリン)のアジア各国における同一国内での段階的価格設定です。「ハラヴェン」の新発売にあたり、本剤を必要とされる患者様が、その所得水準にかかわらず治療を受けられるように、患者様の所得水準に応じて全額負担から無償まで複数の負担価格を設定する「ティアードプライシング」(Tiered Pricing)を導入して、「ハラヴェン」へのアクセスを改善しています。今後も、エーザイが創出した革新的新薬を世界のより多くの患者様にお届けできるように、各国の医療制度に合わせた持続可能なビジネスモデルを追求してまいります。
 当社グループでは、アフォーダビリティーの改善のみならず、医療そのものにアクセスできない患者様のためにはより包括的に医療へのアクセスを改善することが重要であると考えています。中低所得国において医療アクセスを改善するためには、インフラの整備、医薬品の安定供給、医療に関する教育などへの取り組みを含む総合的なソリューションの提案が必要とされます。従って、購入しやすい価格設定を実施すると同時に、それぞれの国や地域の所得レベルに合わせ、NGOsやNPOsとのPPPsの活用も視野に入れたアクセスプログラムを開発し、これらの国の患者様に対する医療(診断と治療)および医薬品へのアクセスを改善することが求められます。当社グループでは、各国の事情に適した、医薬品のアクセスを改善するさまざまなプログラムの開発に取り組んでいきます。
 当社グループは、hhc理念の下、患者様に新たな治療方法を提供するため、日々新たな医薬品の研究開発に取り組んでいます。この目的を達成するため、自社研究にとどまらず、オープン・イノベーションによって、自社の研究成果を他社との提携により治療薬に結びつける努力を行う他、特許制度を利用し、当該成果を技術として最速に公開することで、医薬品の研究開発に携わる業界全体にも寄与しようと心掛けています。新たな医薬品を世に出すには、莫大な時間、労力および費用が必要となります。特許制度は、発明を公にし、かつ、適切に保護する方法を確保することで、いちはやく、患者様やその家族に医薬品を届けるためのリソース投入を促進させるものです。
 当社グループのアドボカシー活動に関しても、社のhhc理念に基づいて行われています。

3.キャパシティビルディング(能力開発)

 当社グループは、「世界の多くの地域では、さまざまな疾病の予防、診断、治療、ケアを可能にする医療提供体制の基盤の改善に向けたさらなる努力が必要である」という国際製薬団体連合会(IFPMA)の声明を全面的に支持しています。
 当社グループでは、自社または業界団体を通して各国政府と密接に協力し、医療研修患者様教育などに取り組むことで、発展途上国における医療システムを強化するために、近代医療の導入を支援していきます。
 当社グループにおいてグローバルな研究協力プログラムである「熱帯病医学特別研究訓練プログラム(TDR)」と連携し、発展途上国の医療関係者への医療に関する知識、スキル、技術の向上を促す教育研修活動を支援するために、発展途上国の医師を研修生として受入れています。さらに、当社グループでは、患者様への教育として、学会、医療専門家、患者会と連携して、疾病と症状、適切なスクリーニング法と治療に関する地域住民への啓発などに取り組んでいます。これらの患者様教育に対する活動は、特定疾患のリスクがある方々に対し、病気への理解を深めていただくことを目的としています。

4.セーフティーアシュアランス

 医薬品の品質を確保することは、安全性や有効性に直接関わるものです。品質問題は、患者様に対して悪影響を及ぼし、公衆衛生全体にも深刻な問題を引き起こす可能性があります。当社グループでは、医薬品の品質を確保することは、企業理念に基づく基本的な取り組みであると考えおり、そのため、発展途上国の市場環境に合わせて、高品質な医薬品を安定的に供給しています。
 当社グループでは、高品質な医薬品の安定供給を成し遂げるため、医薬品の品質保証にかかわる規制の遵守を徹底しております。当社は、WHOや米国、欧州連合などが規定するGMP(医薬品製造規範)要件を取り入れた、より厳しいコーポレートGMP基準を確立し、グローバルに適用しています。その一方で、各国の規制には今日でも国ごとに異なる要求事項が存在するため、現地の人々の医薬品へのアクセスを維持しさらに拡大していく上で、このような違いを考慮した細やかな対応が必要だと考えております。
 医薬品は、リスクとベネフィットを正しく理解したうえで適正に使用されることにより、その価値を最大限に発揮することができます。ファーマコビジランス(医薬品安全性監視)は、WHOにより「医薬品の有害な作用または医薬品に関連する諸問題の検出、評価、理解及び予防に関する科学と活動」と定義され、医薬品のリスクとベネフィットのバランスを正しく評価するために欠かせない存在です。
 当社グループは、患者様の医薬品の適正使用を確保するために医薬品の開発早期段階から市販後までを通して、製品の安全性情報を世界中で絶えず収集・評価し、製品情報をタイムリーにアップデートさせることにより、世界各国におけるエーザイ製品の適正な使用や安全な臨床試験の実施に努めています。
 さらに、当社グループでは、患者様の健康を守るため、プロダクト・セキュリティー活動を通じて、当社製品へのあらゆる犯罪行為に対抗措置をとります。こうした犯罪行為には、医薬品の偽造、正規の流通ルートから逸脱した不正流通、盗難、改ざん、医薬品や包装の意図的な粗悪化、および、粗悪化された当社製品の服用により患者様へ健康被害をもたらしかねない全ての違法行為を含みます。

5.長期的投資

 当社グループでは、自社が事業を展開している国・地域だけでなく、全世界において責任を果たすべきであると強く認識しています。特に、国民の健康の向上は、発展途上国の今後の経済の成長にとって不可欠と考えます。当社グループは、途上国の人々の健康に対し、長期的観点より「投資」を行い、結果として世界各国で中間層が増加していくよう貢献したいと考えています。
 このような「長期的投資」には、2つのアプローチがあります。一つ目は、災害時の義援金です。当社グループでは、災害発生時において必要に応じて義援金による支援を行っています。義援金の目的は、被災地域における経済復興や、当面の医療や公衆衛生を強化するために行うものです。この支援は、あくまで災害時における一時的な支援となります。
 二つ目は、医薬品の無償供給です。当社グループでは、持続的な支援活動を実施することを重視しており、支援を必要とする地域住民との長期的な関係の構築や継続的な社会活動を基本的な考えとしています。医療品の無償供給は、長期的な観点で貧困地域における経済や市場の安定と成長、医療制度や公衆衛生の基盤強化などを促進する大きな取り組みとなります。特にパートナーとの協力のもとで、特定疾患の治療を目的とした医薬品の無償供給支援を計画的に実施することは、それら地域の発展・繁栄に直接影響を与えることになります。なお、全ての医薬品の供給は、WHOのGuidelines for Medicine Donation(2010年版)に従って実施しています。
 当社グループでは、2009年11月に、WHOに対してリンパ系フィラリア症治療薬「ジエチルカルバマジン」(DEC)を無償提供することを決定しました。当社グループでは、WHO基準の品質が保証されたDECを自社で製造し、2013年~2020年の7年間にわたり合計で約22億錠をWHOに無償提供していきます。さらに、医薬品を単に無償提供するだけでなく、各地域におけるリンパ系フィラリア症の制圧を実現するための継続的かつ効果的なソリューションを併せて提案していきます。この貢献活動に関わるエーザイ社員は、東京本社の社員だけではなく、販売会社毎にDEC project managerという専任の役職に任命された社員が中心となって担っています。更に、フィラリア症治療のための新薬の開発や診断キットの提供など、リンパ系フィラリア症の制圧が少しでも早く成し遂げられるように包括的なアプローチを実行しています。

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